病名
イネいもち病、英名Rice blast1 イネのいもち病とは?
昔から、別名「稲熱病」と呼ばれ、恐れられてきたイネの
三大病害の1つです。主として、葉、穂首、穂、籾などの部位に発生します。葉に多くの病斑が生じると草丈が伸びなくなり、ひどくなると枯死してしまういわゆる「
ズリ込み」と呼ばれる症状に至ります。穂では、特に「穂首」と呼ばれる穂の基部がいもち病菌に侵されると、穂に養分が供給されなくなり、「白穂」と呼ばれる現象が見られるようになります。冷害時には、このいもち病が不作の直接的な原因となることがあります。
2 いもち病菌の特徴
いもち病菌は糸状菌(かび)の一種です。籾殻や稲ワラに付着した胞子の状態で越冬するといわれます。越冬後は、胞子から菌糸が伸び、再び形成された胞子が、空気中に飛散し、浮遊するようになります。
平年では、6月に入って降雨量が多くなるとともに、空気中に浮遊している胞子が雨滴に混じって、イネの葉の上に乗ることになります。
病斑が形成される好適な条件としては、日照不足
気温が15℃から25℃
葉の濡れ時間が8時間から11時間以上
などの条件が重なってくる場合といわれます。
いもち病菌は、葉にある「気孔」「水孔」などの自然開口部から侵入します。菌糸が侵入してから、葉に病斑が現れるまで、約72時間かかるといわれます。
病斑の形は、特徴的なひし型をした
「慢性型」病斑と、いもち病菌にとって好適な条件が続いた場合、褐色の小さく丸い「急性型」病斑の2種類が見られます。3 今年多発している原因は?
育苗時期から温度が高く、また軟弱徒長な苗では、既に苗いもちが発生していたケースも見られます。そのような場合、そのまま、本田に持っていったと推察されます。また、6月に入ってから、病斑の数が多くなって来ましたが、これは、日照不足、草姿が悪く、また株の繁茂で通風などが悪くなってきていることが原因の1つとして考えられます。
いずれにしても、ここ近年では、最も早い時期から発生が確認され、出穂までの日数がかなりあることから、穂いもちの多発につながらないように懸命の防除策を講じています。
4 どうしたら防げるの?
イネは外敵からの侵入に対して、「珪化細胞」と呼ばれる動物で例えると、骨格に相当する細胞を植物体の中に発達させています。この珪化細胞をさらに発達させる手段として、含珪酸資材の施用を行うことが上げられます。この細胞が発達したイネでは、物理的に「固く」なります。よって、菌糸も侵入しにくくなるといわれます。
また、胞子の付着をしにくくすることとして、イネの草姿を直立に近いものとすることが上げられます。窒素過多になると、葉が垂れて水滴が乗りやすくなり、いもち病にかかりやすくなります。
この他、いもち病に遺伝的に強い品種を栽培するのが、最も懸命な方法ですが、最近の良質米指向から、そのような品種を選びにくくなっていることも事実です。良質米の代表格である「コシヒカリ」ですが、最もいもち病に弱い品種の1つです。
薬剤を使用して防除する方法ですが、薬剤の種類には「抵抗性誘導型」剤、直接的な殺菌剤など、いくつかのものが市販されていますので、最もあった薬剤を選択して散布することが必要です。剤型としては、粉剤、粒剤、液剤の3つがあり、それぞれ使用場面によって現場では使い分けを行っています。
今年の状況を見ていますと、育苗箱で薬剤施用してしまうタイプのものが、確実に発生を少なくしているようです。常発地では、育苗箱施用してしまうのが、最も確実であるといえます。穂いもちの発生も確実に少なくなると思います。
いもち病の発生について、貴方がお住まい近辺のアメダスポイントごとに、発生の危険度を示してくれる 優れもののホームページがあります。IBCweb様、本当に有り難うございます!!
最後に、
なお、この内容についての著作権は、
福井県若狭農業改良普及センターが所有していますが、防除に役立ていただける場合は、ご自由にお使い下さい。